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〝ビジネス・アーティスト〟へ

18年後の74年、ウォーホルは東京と神戸の大丸百貨店で開催された個展に合わせて、「ポップ・アートの旗手」として2度目の来日を果たした。
この間のウォーホルの活躍は目をみはるばかり。「黄金の60年代」を迎えたアメリカの好景気と軌を一にするように、まずドル紙幣やコカ・コーラのボトル、キャンベルのスープ缶など、自分の好きなものを描いて注目された。アーティストとしての実質的なデビューを飾った作品が、「キャンベル・スープI:トマト」。
本人はもとよりアメリカ人みんなに愛されるこの食品をモチーフに、写真をプロジェクターで拡大映写して油彩にする手法で制作されたものだ。アート界では当初、「ギャラリーに行くのは、スーパーマーケットを体験するためではない」などと批判する向きもあったが、一般のアートファンやコレクターは大歓迎。経済成長を促す「大量生産・大量消費」が生み出したアートとして、人気を集めた。

一方で、子どもの頃からハリウッドスターに憧れていたウォーホルは、多くのスターやセレブリティーの写真を作品化している。「三つのマリリン」はその代表作だ。62年にマリリン・モンローが薬物の過剰摂取で死亡してすぐに彼女の肖像画の制作に着手したという。ほかに“有名どころ”では、ジャッキー(ケネディ大統領夫人)、エルビス・プレスリー、デニス・ホッパー、毛沢東などがある。

また同年、「死と惨事シリーズ」の制作をスタート。自殺や交通事故、大事件などを報じた新聞記事の切り抜きがよく使われた。例えば「ツナ缶の惨事」は、ツナ缶を食べて中毒死した女性の記事から着想された。また「小さな電気椅子」では、スパイ容疑で死刑になったローゼンバーグ夫妻の処刑に使われたものが描かれた。死の恐怖がひたひたと迫ってくるようだ。
こういった作品の“生地”は、通称「ファクトリー」。64年、マンハッタン・ミッドタウンに構えた銀色のスタジオだ。ここは制作現場というだけではなく、ジャンルの垣根を越えた多くのアーティストや各界のセレブ、若者たちが集うサブカルチャーの震源地となった。ウォーホルはアートと同時並行的に、映像作品や立体作品をも手掛け、自ら「ビジネス・アーティスト」と称する活動を展開した。「金を稼ぐことはアートで、働くのもアート。ビジネスで成功するのは最高のアート」とは、ウォーホルらしい“金言”である。
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アンディ・ウォーホル・キョウト / ANDY WARHOL KYOTO
会期:2023年2月12日(日)まで
会場:京都市京セラ美術館 新館「東山キューブ」
京都市左京区岡崎円勝寺町124
開館時間:10:00~18:00(入場は閉館の30分前まで)
休館日:月曜日(ただし祝日の場合は開館)、12月28日(水)~1月2日(月)
www.andywarholkyoto.jp