ANDY WARHOL KYOTO 前編

November 24, 2022 Text Junko Chiba

鬼籍に入って35年後、アンディ・ウォーホルが3度目の来日を果たした。“訪問先”は京都市京セラ美術館。折しも開催中の大回顧展「アンディ・ウォーホル・キョウト」を舞台に、ウォーホルはどんな世界を現出させるのか。作品とともに探訪する。

初めての京都

金閣寺
アンディ・ウォーホル《京都(清水寺)1956年7月25日》 1956年 アンディ・ウォーホル美術館蔵 マニラ紙にボールペン 43.2×35.6㎝ © The Andy Warhol Foundation for the Visual Arts, Inc. / Artists Rights Society (ARS), New York

京都はアンディ・ウォーホルの大回顧展を開くのにふさわしいポイントである。なぜなら彼は2度来日した折に京都を訪れ、多くのスケッチを描き、写真を撮り、創作上の小さからぬ刺激を受けているからだ。日本のどこに、何にインスパイアされたのか。そのあたりから、ウォーホルの世界をのぞいてみよう。

最初の来日は1956年。ウォーホルの名が世界に知られる以前のことである。と言っても、すでに商業イラストレーターとしての成功は手中に収めていた。ブロッテド・ラインという、イラストの線に独特なインクのにじみや風合いを加える自ら編み出した技法で頭角を現すや、I・ミラー社の靴の広告や、ファッション誌の『ヴォーグ』『グラマー』に発表したイラストレーションが話題を呼ぶなど、大変な売れっ子だったのだ。

ただ時期的には、商業デザインから少しずつ距離を置き始めた頃に重なる。折しもアート界で新風を巻き起こした「ネオダダ」と呼ばれるムーブメントに刺激されたこともあったのか、人生航路のかじをデザイナーからアーティストへと切ろうとしていたようだ。友人とともに6週間の世界一周旅行に出たのは、そんな転換期を意識した“リフレッシュ策”だったのかもしれない。

いずれにせよ旅先の一つに日本を選んでくれたことが感慨深い。というのも日本では当時、先の大戦での敗戦から10年を経て、「もはや戦後ではない」と言われたこの年から、高度経済成長への快進撃が始まったからだ。「新しい時代への出発点に立っている」という点で、ウォーホルと日本の間には、互いに響き合うものがあったのではないかと勝手に感じている。

クジャク
アンディ・ウォーホル《孔雀》 1957年頃 アンディ・ウォーホル美術館蔵 ストラスモア紙に金箔、水彩、インク 45.4×25.7cm © The Andy Warhol Foundation for the Visual Arts, Inc. / Artists Rights Society (ARS), New York

展覧会では、一旅行者として訪れた京都で記録した、清水寺を始めとする寺社や祭礼、僧侶、舞妓などのスケッチが展示されている。彼にとって未知のエキゾチックなものに触れ、ビジュアル表現の幅を広げようとしたことは想像に難くない。

実際、帰国した翌年に開催された展覧会「金のスリッパと靴のショー」では、金閣寺や東南アジアの寺院の影響を彷彿とさせる作品が多数披露されている。また龍安寺での時間的・空間的体験が、後年制作された数々の「何も起こらず、明確なストーリーもない映画」につながったと言われている。

ANDY WARHOL 中編「〝ビジネス・アーティスト〟へ」はこちら

AW in Kyoto

アンディ・ウォーホル・キョウト / ANDY WARHOL KYOTO

会期:2023年2月12日(日)まで
会場:京都市京セラ美術館 新館「東山キューブ」
京都市左京区岡崎円勝寺町124
開館時間:10:00~18:00(入場は閉館の30分前まで)
休館日:月曜日(ただし祝日の場合は開館)、12月28日(水)~1月2日(月)
www.andywarholkyoto.jp

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