個人海外投資に必要な国際税務の基礎知識 第25回

June 16, 2022 Text 永峰 潤 公認会計士・税理士

索引号

はじめに

当初3回の予定で始まった本コラムも回を重ねて25回の長期連載となりましたが、ここでいったん終了となります。長らくお読みいただいた皆様にお礼申し上げます。 今回は過去に取り上げたトピックをご紹介します。『NILE’S CODE DIGITAL』で再読可能ですので、ご興味あるものがあればご覧ください。ご愛読いただきありがとうございました。

所得税の話

今読み返しますと、所得税と相続・贈与税をコラムで取り上げた割合は大体25%対70%、その他が5%でした。当然ながら、これは私どものクライアントから持ち込まれる相談の割合とほぼ一致しています。以下に具体的なお話をご紹介します。

外国通貨と為替差損益(第1回、16回)

日本では円のみが法定通貨です。法定通貨とは国が税金の支払いを受け入れる通貨と考えても構わないでしょう。外国通貨は「法定通貨でない資産」とみなされるため、外国通貨の取得時、交換時には外国為替取引が行われ、その結果、損益を計算する局面がでてきます。外国通貨の交換による外国為替損益の発生する理由はこれにつきます。

金投資と暗号資産(第9回、21回、22回、23回)

ロシアのウクライナ侵攻も影響してか現在金価格は1グラム9,000円弱まで急騰。短期的な税引き前利益を比較すると現物よりもETF(上場投資信託)が税務上有利です。昨今、話題にあがる暗号資産についてもご紹介しました。投機的な商品として紹介されることが多い暗号資産ですが、各国の政治・経済事情により発行量がコントロールされる法定通貨よりも、ビットコインのような管理者のいない通貨が国際間の決済手段としては優れている面があることを指摘できます。

出国税(第12回)

富裕層のいわゆるキャピタルフライトへの対抗策として、国外移住時に有価証券等を1億円以上保有している場合に含み益に譲渡益課税する制度です。相続時に被相続人が保有していた有価証券を海外居住の相続人が相続する場合にも、このルールが適用されます。

相続税・贈与税の話 居住者概念(第2回、24回)

税法上の居住者概念は厳密に定義されていて居住者判断の中心になるのは「住所地」です。住所地は各種要素から総合的に判定されます。よく言われる海外に183日以上居住しているから日本で税金がかからないというのは、相続税には関係のない話。

国際相続(第3回、4回、7回、8回)

たとえばハワイに不動産や預金を遺のこしたままで相続が発生すると、両国(日本とハワイ州)の相続法適用の問題と相続税法適用の問題が生じます。前者の場合、米国特有の制度としてプロベートがあるため、事前にこれに対する対策(TODD、POD、信託)も講じておかないと問題は更に複雑化します。被相続人が日本在住だった場合は、すべての財産を相続対象として相続税を計算し、米国で相続税がかかっている場合は一定限度を日本の相続税から控除可能です。

信託(第5回、15回、17回)

米国ではプロベート回避策としての信託制度の利用がポピュラーですが、日本では財産所有者が委託者として信託を設定し、その受益者に委託者以外の者が指定されると、受益者に贈与税が課税されます。課税の繰り延べ措置もないため、米国同様に信託がポピュラーに用いられるには税法上の手当てがなされなければ難しいでしょう。

国際結婚と二重国籍(第6回、16回、18回)

国際結婚によって日本人が外国の国籍を自発的に取得した場合、日本人は即座に日本国籍を喪失します。その時点からその人は日本に不法滞在している外国人になる蓋然性があるため注意が必要です。日本は二重国籍を認めていません。

相続税と贈与税の一体課税(第10回)

2022年4月19日の最高裁判決で、相続税の財産評価に「路線価方式」を用いるのは実勢価格との乖離が大きいため認められないとした国側が勝訴しました。あらゆる場合に路線価を使うことが認められないかのは不明ですが、現在、合法的に認められる節税手段である生前贈与に対しても、近い将来、封じられることが予想されます。

永峰 潤(ながみね・じゅん)
東京大学卒業後、ウォートン・スクールMBA。監査法人トーマツ、バンカーズ・トラスト銀行等を経て、現在は永峰・三島コンサルティング代表パートナー。
nagamine-mishima.jp

※『Nile’s NILE』2022年6月号に掲載した記事をWEB用に編集し掲載しています

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