来春上陸の魅力的なThe Beetle

February 1, 2020 Text Fumio Ogawa
May 12, 2022 Last modified

Volkswagen The Beetle

丸型ヘッドランプのモチーフは継承されたが、ウィンドグラフィクスが変更されスポーティな印象が強くなった。
丸型ヘッドランプのモチーフは継承されたが、ウィンドグラフィクスが変更されスポーティな印象が強くなった。

「アメリカ人にとって、フォルクスワーゲンを買うことはビートルを買うことであり、ドイツ人にとっては、ビートルを運転することは、1950年代の驚異的な経済復興を体験することでした」

この文章は、プレス向けに配布されたフォルクスワーゲンからのメッセージの中にある一文。1938年に発表されて、戦後、多くのひとが乗ったオリジナル・ビートルの魅力について語ったものだ。その魅力を現代的に解釈して人気を呼んだのが、1997年発表のニュービートル。そして2011年、その後継車「ザ・ビートル」が発表された。

世界中のジャーナリスト向けにザ・ビートルの試乗会が開かれたのは、ベルリン。いまは商業地区としてツーリストでにぎわうポツダム広場に近いところに、特設会場が設けられ、発表されたばかりのザ・ビートルがずらりと並べられた。

「15年ぶりのモデルチェンジで意識したことは、より多くのひとに愛してもらえるクルマにしようということです。それがオリジナル・ビートルが持っていた魅力につながることだと考えました」。試乗会会場で出合ったプロダクト・コミュニケーション担当のカイン・グルーバー氏は語る。

男性の購買層にも選んでほしい

インテリアの意匠は大きく変更されたうえ、居住スペースが拡大している。写真のレザーシートはオプションで用意されるもの。
インテリアの意匠は大きく変更されたうえ、居住スペースが拡大している。写真のレザーシートはオプションで用意されるもの。

ザ・ビートルをひと目観ると、ニュービートルより精悍になっているのを感じる。女性にも人気が高かったニュービートルが丸いルーフラインでキュートなかんじだったのに対して、今回のザ・ビートルは、ドアなどに挟むくさびを思わせるウェッジシェイプが強くなり、開発担当者が「もっとパワーを感じさせることを意識した」と言うとおり、運転を積極的に楽しむクルマになった印象だ。

ボディサイズは、全長4278(ニュービートル+152)×全幅1808(同+84)×全高1486(同+12)㎜と、ひとまわり大きくなっている(それでも使い勝手のよいサイズだが)。いっぽう、前輪と後輪の中心を結ぶいわゆるホイールベースは2537mmと22mm延長されて居住性もよりよくなっている。

丸いヘッドランプというアイデンティティは守られたが、いっぽうでリアのコンビネーションランプは横基調となり、丸みをおびたリアフェンダーに組み込まれた。実車を見ると、期待以上にマッシブなイメージだ。開発者が「今回は男性の購買層にも積極的に選んでほしいと思った」と語るのがわかる気がする。

インテリアも凝っている。ニュービートルはシンプルで、まるでミニマルな家具のような雰囲気を持っていたが、ザ・ビートルはより楽しさに重きを置いたかんじだ。ハンドルは感触がよく、着座位置も自然。そこから横に視線を移動すると、「ビートルボックス」と呼ばれるグラブボックス(ダッシュボードの小物入れ)が目に入る。オリジナル・ビートルを知っているひとは、なつかしいと思うような凝ったディテールだ。

クルマと一体感が強くなったスポーティな操縦性

エアインテーク一体型のフロントバンパーがアグレッシブな印象を強めている。
エアインテーク一体型のフロントバンパーがアグレッシブな印象を強めている。

試乗車は200psの2リッター4気筒ターボエンジン搭載モデル。当初用意されるラインナップは、1.2リッターターボ、1.4リッターツインチャージャー(ゴルフでおなじみのスーパーチャージャーとターボチャージャーを備えたスポーティなエンジン)、それに北米向けの2.5リッター。欧州ではさらに2種類のディーゼルエンジンが揃う。日本では来春の発売時は、1.2リッターになる予定だそうだ。

ゴルフGTIと共通の2リッターターボユニットはパワフルだ。エンジンのことをあまり詳述してもしようがないので、日本仕様と共通しそうな特徴に目を向けてみよう。

走り出してすぐ感じるのは、より一体感が強くなったことだ。「ウィンドシールドの傾斜角を少し立てて運転者の着座位置を最適化。それによってクルマとの一体感が高まるようにした」とエンジニアが教えてくれたが、その効果ははっきり表れている。ハンドルは軽めで、女性でも運転しやすく、かつ切ったときの車体の反応は早いので、運転に慣れているひとも、そうでないひとも、ともにザ・ビートルは楽しませてくれる。

トランスミッションはゴルフなどでおなじみ、オートマチックのように2つのペダルしか持たないが、燃費のよさではマニュアルと同等の「DSG」となる。これもザ・ビートルを運転していて、加速したいとき減速したいとき、気持ちがクルマにすぐ伝わるような気持ちよさだ。

室内はさきに書いたように、乗員の着座位置の見直しなどで、2人乗りの後席の空間がうんと広くなっている。おとな4人で快適に乗っていられる。ボディは2ドアのみなので、パーソナルな要素が強いが、実用性が向上しているのはザ・ビートルの美点だ。

フェンダーのサウンドシステムを 世界で初めて搭載

リアのコンビネーションランプが角形になったのが大きな特徴。フェンダーのサウンドシステムや大型サンルーフで快適性は向上。
リアのコンビネーションランプが角形になったのが大きな特徴。フェンダーのサウンドシステムや大型サンルーフで快適性は向上。

日本への上陸は2012年春が予定されているザ・ビートル。どのような仕様が入ってくるか未定だが、カタログをみると、夜間による明るいバイキセノン・ヘッドランプや縦列駐車をアシストしてくれるパークパイロットなどを装備が目につく。いっぽうで、ニュービートルよりガラス面積が80%拡大したというガラスルーフやナビゲーションシステムなども快適性を高めてくれるだろう。

もうひとつ、話題になっているのが、フェンダー・サウンドシステムのオプション設定だ。フェンダーはご存知のように、エリック・クラプトンやジミ・ヘンドリクスら、名だたるロックミュージシャンに愛されたブランドだ。そのフェンダーとパナソニックが共同開発したオーディオが、自動車でははじめてザ・ビートルのために用意されている。

「音量をしぼってもしっかりした音が聴けること、中域がはっきり出ること、低音にめりはりがあることを開発目標にしました」とパナソニックの担当者が語るように、搭載されているハードディスクで音源を聴いたかんじでは、音疲れしなさそうなクリアな音色だった。120km/hまでは少なくとも車内騒音が不当に高まることもないので、音楽を聴きながらのリラックスムードの運転も楽しめるということだ。

「このクルマはずっと愛されてほしいと思ってデザインしました。ユニーク(他に類がない)なのは、乗るひとの個性を尊重するようなオプションなどを用意していることです」とデザイン担当のヤン・ハアケ氏は言う。運転が好きなひと、音楽が好きなひと、あるいは友人たちと乗るのが好きなひと……さまざまなひとの要求に応える。これはぜいたくだ。それゆえ、日本の富裕層も、ザ・ビートルに注目してよいと思う。

THE BEETLE 2.0 TSI
ボディ|全長4278×全幅1805×全高1486mm
エンジン|2.0ℓ 直列4気筒DOHC+インタークーラー付きターボチャージャー
最高出力|147kW[200ps]/5100rpm 最大トルク|280Nm/1700~5000rpm
駆動方式|FF トランスミッション|6段DSG 価格 未定

●問い合わせ 
フォルクスワーゲン カスタマーセンター 0120-993-199

※『Nile’s NILE』に掲載した記事をWEB用に編集し再掲載しています

新着記事

中尊寺ゆつこには30年後が見えていた⁉

ART&CULTURE

ジェンダー問題、サステナブル、スピリチュアル、ヒップホップ、etc……。
バブルが膨らみ始めた1980年代末、彗星のごとく登場した女流マンガ家、中尊寺ゆつこ。「オヤジギャル」という流行語を生み出し、『お嬢だん』『スイートスポット』などの連載マンガをヒットさせ、ガムのテレビCMにも起用されるなど、時代の寵児となっていきました。当時のトレンドをリードしたことに注目が集まりがちですが、実は今に通じる様々な意識改革を発信した先駆者でもあったのです。当時、PLAY BOY日本版に連載された彼女の記事をめぐって、中尊寺ゆつことは何者だったのかを検証します。

ART&CULTURE

ジェンダー問題、サステナブル、スピリチュアル、ヒップホップ、etc……。
バブルが膨らみ始めた1980年代末、彗星のごとく登場した女流マンガ家、中尊寺ゆつこ。「オヤジギャル」という流行語を生み出し、『お嬢だん』『スイートスポット』などの連載マンガをヒットさせ、ガムのテレビCMにも起用されるなど、時代の寵児となっていきました。当時のトレンドをリードしたことに注目が集まりがちですが、実は今に通じる様々な意識改革を発信した先駆者でもあったのです。当時、PLAY BOY日本版に連載された彼女の記事をめぐって、中尊寺ゆつことは何者だったのかを検証します。

おすすめ記事

ラグジュアリーとは何か?

ラグジュアリーとは何か?

それを問い直すことが、今、時代と向き合うことと同義語になってきました。今、地球規模での価値観の変容が進んでいます。
サステナブル、SDGs、ESG……これらのタームが、生活の中に自然と溶け込みつつあります。持続可能な社会への意識を高めることが、個人にも、社会全体にも求められ、既に多くのブランドや企業が、こうしたスタンスを取り始めています。「NILE’S CODE DIGITAL」では、先進的な意識を持ったブランドや読者と価値観をシェアしながら、今という時代におけるラグジュアリーを捉え直し、再提示したいと考えています。