ロールス・ロイスの ビスポークプログラム

February 1, 2020 Text Fumio Ogawa
May 12, 2022 Last modified

洋服、靴、カバン、そしてクルマ…… ビスポークという楽しみ

(上)ロールスロイス・ファントム・ドロップヘッドクーペ(車両本体価格 54,915,000円)。4名が乗れる優雅なスタイル。(下左)ダッシュボードは目立つのでウッドの選びなどオーナーの審美眼を見せるのに最適とされる。(下右)チークデッキとタータンのライニングで仕上げというアウトドア好きなオーナーならではのセンスが光る。バスケットや双眼鏡ケース、水筒、ストックなどもオリジナルで誂えている。
(上)ロールスロイス・ファントム・ドロップヘッドクーペ(車両本体価格 54,915,000円)。4名が乗れる優雅なスタイル。(下左)ダッシュボードは目立つのでウッドの選びなどオーナーの審美眼を見せるのに最適とされる。(下右)チークデッキとタータンのライニングで仕上げというアウトドア好きなオーナーならではのセンスが光る。バスケットや双眼鏡ケース、水筒、ストックなどもオリジナルで誂えている。

世界でただひとつ、自分のために作られたものを持つのが夢、というひとは多いのでは。有名なのは歌手であり女優でもある英国人、ジェーン・バーキンのためにエルメスが作ったバーキンバッグ。クルマでも世界に1台しかないものに乗れたら、すてきかもしれない。ロールス・ロイスでは、そんな嗜好を持つひと向けに、特注のクルマを作る「ビスポーク」プログラムを提供している。

ロールス・ロイスの「ビスポーク(特別あつらえ)プログラム」がスタートしたのは2003年。6mになんなんとする威風堂々たるボディに、パワフルな6.75リッターのV12エンジンを搭載した「ファントム」が発表されたのと機を一にして、特別仕様を好む顧客のために設定された。

そもそも英国でチャールズ・ロールズと、ヘンリー・ロイスが組んでクルマづくりを始めた1900年代初頭は、エンジンとシャシーのみが販売され、顧客は自分で車体架装メーカーを見つけ、好みのデザインを注文していた。それから約100年後に肝いりで始まったビスポークプログラムは、「幅広い選択肢とパーソナライゼーションはロールス・ロイスブランドの真髄であり、独自の顧客サービスのあり方を体現」(ロールス・ロイス)したものとらえることが出来る。

好みの仕様に仕上げるビスポーク

(上)別のオーナーがオーダーした4名用のピクニックセット。全てグッドウッドのビスポークチームがデザインしている。(下左)ダッシュボードのインレイ(象がん細工)も好みで仕上げてもらえる。(下右)ヘッドレストにはオーナーのモノグラム(イニシャルの組み合わせて図案化したもの)などを刺繍で入れることも出来る。
(上)別のオーナーがオーダーした4名用のピクニックセット。全てグッドウッドのビスポークチームがデザインしている。(下左)ダッシュボードのインレイ(象がん細工)も好みで仕上げてもらえる。(下右)ヘッドレストにはオーナーのモノグラム(イニシャルの組み合わせて図案化したもの)などを刺繍で入れることも出来る。

ビスポークとはなにか。車体を好きな色に塗ることも、内装の革やウッドを好きな素材から選ぶこともビスポーク。たとえば、結婚の記念日の納車を前提に配偶者の好きなマニキュアの色に車体を塗ってほしいという注文もあれば、革シートの縫い目に使う糸の色を革と変える「コントラストスティッチング」や、シートの縁の部分のパイピングの色を好きに選ぶのもこの範囲に入る。

「一般的に言って、中東ではオリジナルカラーを作るなどペイントで遊ばれるケースが多いです。一方、日本を含む南~東アジアのお客様はウッドに関する知識が豊富で、英国グッドウッドのウッド工房では特別の注文をお受けしています。特に日本人のお客さまはクラフツマンシップを尊ばれディテールにもこだわられることから、レザー部分への刺繍や、ウッドの象嵌や寄木などの手法を用いた工芸的なビスポークが好まれます」(ロールス・ロイス)

ある日本人は車内で飲料を保管するキャビネットをオーダー。そこに付属するドリンクホルダーとクールボックスを、その顧客が好んでいる缶飲料にぴったりのサイズに仕上げたこともあったそうだ。そのために、日本からその飲料の空き缶をグッドウッドに航空便で送り、スタッフが採寸したとか。

納車ずみの車両でもビスポークができる

(上)グッドウッドにある工房では、あらゆる材質の木が揃い、顧客の好みに合わせて的確に選ばれるそうだ。(下)シートのステッチもお好みで。シート同色、コントラストのついた組み合わせ、ボディ外板色に合わせた色……さまざまなセオリーがある。
(上)グッドウッドにある工房では、あらゆる材質の木が揃い、顧客の好みに合わせて的確に選ばれるそうだ。(下)シートのステッチもお好みで。シート同色、コントラストのついた組み合わせ、ボディ外板色に合わせた色……さまざまなセオリーがある。

ビスポークプログラムは特に日本を含む南東アジア地域で成功を収めている、とロールス・ロイスでは言う。昨年製造されたファントムシリーズの85%が何らかのビスポークオプションを備えていたそうだ。オーダーの方法は、ロールス・ロイス・モーターカーズのディーラーを通して行われ、グッドウッドのビスポークチームがディーラーおよび顧客とやり取りをして仕様を決定する。

「グッドウッドの本社工場に足を運び、コントラストスティッチの色や、シートパイピングなどのディテールにいたるまで細かな仕様について直接ビスポーク担当者と話しあって決められるケースもあります」とロールス・ロイスでは教えてくれた。

すでに納車された車両に何らかのビスポークオプションを施すことも可能。ファントムを購入した後にキッキングプレート(ドアをまたぐ車体の部分に張られた金属板)やヘッドレストを、好みの仕様に変えられる。

デザイナーとやりとりして 発注に6カ月かける?

ロールス・ロイスには顧客の要望に対応するためのビスポーク部門がある。
ロールス・ロイスには顧客の要望に対応するためのビスポーク部門がある。

納期は3カ月からで、デザイナーとのやりとりが多くなればそのぶん時間もかかる。また、完全にワンオフのビスポークになると、「エンジニアリング上の実現可能性や製造工程のアセスメントが必要になります」という。このレベルのビスポークになると、納車までに6カ月以上を要する。

ビスポークには、いろいろな目的がある。ひとつはプレゼントのため、あるいは自分への特別なごほうび。これは注文主の美意識が大きくものをいうため、世界に1台しかない車両が出来上がる。ただし他者と美意識が共有しにくいため、転売となると、やや難しくなってくる。

そのいっぽう、ロールス・ロイス史上有名なモデル(レースカーや有名なオーナーが乗っていたクルマ)を参考に、デザイン部門と相談しながら作ったようなモデルは、他人からも理解されやすく、次のオーナーも見つかりやすい。同時に、そのひとのロールス・ロイスへの理解を表現する手段として、評価も得やすい。これもビスポークのひとつの楽しみかただ。


●ロールス・ロイス・モーター・カーズ横浜(神奈川)
https://www.rolls-roycemotorcars.com/yokohama/ja_JP/showroom.html
●ロールス・ロイス・モーター・カーズ
https://www.rolls-roycemotorcars.com/en_GB/home.html

※『Nile’s NILE』に掲載した記事をWEB用に編集し再掲載しています

新着記事

中尊寺ゆつこには30年後が見えていた⁉

ART&CULTURE

ジェンダー問題、サステナブル、スピリチュアル、ヒップホップ、etc……。
バブルが膨らみ始めた1980年代末、彗星のごとく登場した女流マンガ家、中尊寺ゆつこ。「オヤジギャル」という流行語を生み出し、『お嬢だん』『スイートスポット』などの連載マンガをヒットさせ、ガムのテレビCMにも起用されるなど、時代の寵児となっていきました。当時のトレンドをリードしたことに注目が集まりがちですが、実は今に通じる様々な意識改革を発信した先駆者でもあったのです。当時、PLAY BOY日本版に連載された彼女の記事をめぐって、中尊寺ゆつことは何者だったのかを検証します。

ART&CULTURE

ジェンダー問題、サステナブル、スピリチュアル、ヒップホップ、etc……。
バブルが膨らみ始めた1980年代末、彗星のごとく登場した女流マンガ家、中尊寺ゆつこ。「オヤジギャル」という流行語を生み出し、『お嬢だん』『スイートスポット』などの連載マンガをヒットさせ、ガムのテレビCMにも起用されるなど、時代の寵児となっていきました。当時のトレンドをリードしたことに注目が集まりがちですが、実は今に通じる様々な意識改革を発信した先駆者でもあったのです。当時、PLAY BOY日本版に連載された彼女の記事をめぐって、中尊寺ゆつことは何者だったのかを検証します。

おすすめ記事

ラグジュアリーとは何か?

ラグジュアリーとは何か?

それを問い直すことが、今、時代と向き合うことと同義語になってきました。今、地球規模での価値観の変容が進んでいます。
サステナブル、SDGs、ESG……これらのタームが、生活の中に自然と溶け込みつつあります。持続可能な社会への意識を高めることが、個人にも、社会全体にも求められ、既に多くのブランドや企業が、こうしたスタンスを取り始めています。「NILE’S CODE DIGITAL」では、先進的な意識を持ったブランドや読者と価値観をシェアしながら、今という時代におけるラグジュアリーを捉え直し、再提示したいと考えています。