織物で表現したモリスの世界

April 30, 2022 Text Asuka Kobata

植物や動物をモチーフに美しい自然を描いたウィリアム・モリスのデザインが、織物で表現されていることをご存じだろうか。川島織物セルコンが織物の会社として長年培ってきた技術が、モリスの緻密で計算し尽くしたデザインと融合し、新たな魅力を生み出している。

ラウンジチェアに張ったのが「いちご泥棒」で、左手のカーテンが「ケルムスコットツリー」
ラウンジチェアに張ったのが「いちご泥棒」で、左手のカーテンが「ケルムスコットツリー」。ウィリアム・モリスのモダンで美しいデザインと、織物の高級感が相まって、エレガントで上質な空間をかなえてくれる。

800年代に活躍したイギリスのクラフトデザイナー、ウィリアム・モリス。自然界の表情豊かな木々や草花をモダンにパターン化した彼のテキスタイルデザインは、誰もが一度は目にしたことがあるだろう。その緻密(ちみつ)で美しいデザインを織物で表現し、インテリアファブリックスとして展開しているのが、「織」のトップメーカーであり、江戸時代から176年の歴史を持つ川島織物セルコンだ。イギリス本国でモリスのデザインを継承するウォーカーグリーンバンク社のライセンスに基づき、ファブリックブランド「モリスデザインスタジオ」を2000年からスタートしている。

モリスはデザイナーだけでなく、詩人、小説家、翻訳家、社会主義運動家として、さまざまな分野で活躍する多才な人物だったという。彼が生きたのは、ものづくりが工業化され、工場での大量生産や分業制が主流となりつつある時代。そんななかで古くからのクラフツマンシップや手仕事を大切にしながら壁紙やステンドグラス、家具などの工芸品を製作し、のちに「近代デザインの父」と呼ばれるように。特に力を注いでいたのは室内装飾の総合的なデザインで、木版のハンドプリントで自然をモチーフにした美しい壁紙やテキスタイルを生み出した。それらは、時代を感じさせないほどにモダンかつ普遍的で、現代でも多くの人々に愛され続けている。

「 いちご泥棒」では縦に3種、横に4種、いちごには部分的にもう1種の糸を使用。
「 いちご泥棒」では縦に3種、横に4種、いちごには部分的にもう1種の糸を使用。多くの色を使った緻密なデザインを再現するため、糸の種類や色数は一般的な織物より多いという。

そんなモリスの壁紙やテキスタイルは、前述のようにオリジナルの多くが木版プリントであり、現在でもほぼ全てがプリントで再現されている。世界中に広く普及するデザインだが、織物で表現しているのは日本の「モリスデザインスタジオ」だけだろう。川島織物セルコンでは長年の歴史のなかで培ってきたノウハウを生かし、糸の色や種類を丁寧に選びながら独自の織物設計図を作成。緻密で計算し尽くした彼のデザインを織物で再構成することで、プリントにはない立体感や深みを表現し、モリスの世界を引き立てながら独自の魅力を生み出している。

オリジナルのデザインを織物として再構成する作業は全て川島織物セルコンが担当。
オリジナルのデザインを織物として再構成する作業は全て川島織物セルコンが担当。京都・市原にある工場で一枚一枚丁寧に織り上げている。

これまでに数々のデザインを再現し、バリエーション豊かなラインアップをそろえるが、最も人気を集めているのはいちごをついばむツグミを描いた「いちご泥棒」。モリスが刺繍(ししゅう)で表現した「ケルムスコットツリー」は、より立体感が引き立つよう織られている。レリーフのように草花の柄が浮かび上がる「エイコーン」は単色で織り上げているため、どのようなインテリアにもなじみやすいだろう。どれも空間をエレガントに彩り、織物ならではの重厚感や高級感を楽しむことができる。

モリスデザインスタジオ
モリスのデザインは世界中で知られる普遍的なものだが、織物で表現しているのは日本の「モリスデザインスタジオ」のみ。奥行き感のある贅沢な質感は織物ならではだろう。

これらのファブリックはカーテンや家具の張り地としてオーダーできる他、クッションやテーブルランナー、マットやラグといった製品もそろえる。まずはクッションだけでも気軽に取り入れ、モリスの世界を身近に感じてほしい。

●川島織物セルコン TEL03-5144-3892 

※『Nile’s NILE』2019年10月号に掲載した記事をWEB用に編集し掲載しています

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