時代を読む――原田武夫 第100回

December 1, 2021
July 14, 2022 Last modified

何が決まらなければ「負の連鎖」は止まらないのか

時代を読む――原田武夫 第100回 何が決まらなければ「負の連鎖」は止まらないのか

我が国においては「COVID-19」と呼称される、新型コロナウイルスによる疾病の感染者数が実に驚くべきほど減少してきたと、この原稿を書いている段階(2021年10月末)においては喧伝されている。実に「驚くべき」ほどの減少ぶりなのであって、あれほどまでに「我が国でも死者は数十万人に上ることになる」と恐怖シナリオを煽りに煽っていたマスメディアは一気に沈黙を守り始めている。あまりにも滑稽なこうした方向転換に、見る側・聞く側である私たちは全くもってあきれるばかりなのだ。

ところが、である。我が国を離れて地球の裏側においてはどうかというと、全く違う光景が広がり始めている。筆頭格なのが世界に先駆けて行動規制を解除した英国だ。桁外れの感染者数増加が日に日に報じられるようになり、事態は明らかに急迫しているように見える。

それと同時にそもそも「ワクチンが行き渡らなかった」との懸念が語られていた東欧諸国でも感染者数が再び指数関数的に増え始めている。特に状況がひどいとされているのが東欧の中でも貧困問題で知られる国の一つであるルーマニアである。かつてチャウシェスク大統領の独裁に苦しんだかの国の市民たちは今、再び襲い掛かり始めたパンデミックに苦しみ始めているのだという。

こうした状況下で不思議と我が国のマスメディアが黙殺している事実がある。それはイタリア、あるいはフランスといった諸国において、大勢の市民たちが全くもって後手にまわっている政府の対応、とりわけ再び強化し始めている行動制限措置に対して「NO」と叫び、拳を振り上げ始めていることである。

とりわけひどいのがイタリアにおける状況であり、一時は「このまま行くとこうした状況に乗じて、かつてのファシストにも似た右翼過激派がローマを中心とした大都市では勢力を一気に拡大するのではないか」とまで言われている始末だ。繰り返しになるが、我が国のマスメディアは何を恐れてかこうした事態の急変について黙殺を貫いている。一体、何を恐れるというのであろうか。

片や明らかに弛緩し始めている我が国。そうかと思えば他方では緊迫度を増している欧州、そしてそれ以外の世界各国。この「ズレ」あるいは「矛盾」は何が原因であって、結果として何がそこから紡ぎ出されるというのであろうか。

我が国もやがては後者と同じく「第6波が到来」「だから全員、ワクチン接種を義務化せよ」「いや、それだけでは足りないのであって3度目、4度目の接種をも義務にせよ」となるのであろうか。

しかし肝心のワクチン接種によっても事態が全く変わらないことは地球の裏側における惨状を見れば明らかなのだ。そこで見えるのはただひたすら「負の連鎖」だけである。

こうした状況を一変させる方法がただ一つだけある。問題となっているウイルスの変化よりも速くその方向性を正確に計算し、それに基づくワクチン、抗体、さらには治療薬を創り出すこと。そして大前提としてこの2年で明らかに蝕まれている私たちの基礎免疫力を復活させるためのあらゆる手段が地球上のすべての人々に行き渡ること。さらにはこの「負の悪循環」を明らかに悪用し、この期に及んでもまだ自己の利益の極大化のために暗躍する、現在の「政治」の在り方を根本から変えること、である。

実のところこれらはいずれも全く不可能なわけではなく、すでにそれらに向けた試みが始まっているというのが正しい。ただし、そこでこれまで欠けてきたものがたった一つある。それはこれら人類史上の意義を持つプロジェクトに対して「一切の見返りを求めない巨額の資金」を投じる存在の意思と行動である。文字どおりの「人類資金」なのであって、これがようやく浮上し始めないかぎり、確実に先ほどの「負の悪循環」は永遠に回り続け、我が国を含めたグローバル社会全体に生きる人類は破滅へと向かう。

以上は「荒唐無稽」な話では全くない。そしてその意味での熱い視線は我が国に向けられている。

原田武夫 はらだ・たけお
元キャリア外交官。原田武夫国際戦略情報研究所代表(CEO)。情報リテラシー教育を多方面に展開。2015年よりG20を支える「B20」のメンバー。

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